初めて聴いたのは、ジンマンのマーラーでした

初めて聴いたマーラーが何番だったか、実を言うとよく覚えていないのです。ただし、指揮者はデイヴィッド・ジンマン、演奏はチューリヒ・トーンハレ管弦楽団のRCA盤だったことは、はっきりと覚えています。私は新しいもの好きなので、ジンマンのディスクがすべてスーパーオーディオCDSACD)であったことに惹かれての購入だったからです。

1枚買っては聴き、また1枚買っては聴くうちに、私はマーラーの虜になって行きました。今から考えれば、ジンマンの演ずる「癖のないアメリカン・マーラー」の口当たりの良さが幸いしたことは確かなようです。ジンマン全集は、変な癖がつかない、と言う意味で、マーラー入門に向いているのかも知れませんね。いきなりカラヤンを聴いたりしたら、余りの濃厚なマーラーに、窒息してしまったかも知れません。

引っ越した先に1軒だけあった中古CDショップで、私はマーラーを買いました。ですので、手に入れる可能性のあるCDは、店頭にあるものだけ。誰かが買ったディスクが次の週には補填されている、と言うこともありません。店頭にあるものが、文字通り全てでした。誰かが買ってしまったら、そこで一巻の終わりです。まあ、府中はのんびりしたところですので、今更マーラーを買う人など、私の他にはいませんでしたが。

そのような、私の「マーラー元年」は、ちょうど「PCオーディオ」がはやり始めた頃でした。PCオーディオとは、CDに記録されている音楽を、PC、つまりパソコンのハードディスクに一度記録し、その音源を、もう一度パソコンを通して再生し、鑑賞すると言う、音楽鑑賞にコペルニクス的展開をもたらすものでした。

しかしながら、今では、もうCDを介することすらなく、インターネット上のミュージックショップから直接音楽ファイルをオーディオシステムに記録する「配信」の方が、すっかり主流になってしまいましたね。

その進化の早さには驚かされますが、私は「CDで聴く」ことにこだわり続けたため、いつの間にか時代の進化から取り残されてしまいました。2000枚のCDと共に……。