デイヴィッド・ジンマンの甘過ぎるマーラー

今朝はここ半月の間にしては珍しいくらいに凌ぎやすかったので、部屋を出る前に少し荷物の整理をすることが出来ました。玄関に置かれているいくつかの小さなダンボールを開梱すると、タワーレコードで購入したリボル・ペシェク指揮のマーラー全集が出て来ました。私はこの全集をかなりの期待を持って購入したのでしたが、どうもハズレだったと言わざるを得ません。ペシェクのマーラーは、平凡なマーラーでした。あるいは、私の感覚が平凡なものになってしまったのかと心配にもなりましたが、そのことを心配する必要は幸いにしてなさそうです。芸術の世界のことですから、ときには残酷なことも言わなければなりません。高いお金を支払って買ったマーラー全集が詰まらなかったとしたらどうでしょう? そのような訳で、私はペシェクのマーラーを傍らに押しやり、デイヴィッド・ジンマンマーラー全集を手に取って、CDをパソコンにセットしたのでした。

 包み隠さずお話しするなら、私はジンマンでマーラーを初めて知りました。それまでは食わず嫌いで、マーラーなど、まったく聴いたことがなかったのでした。ですから、マーラー演奏について、たいしたことを述べる資格はないのですが、デイヴィッド・ジンマンは、やはり実力のある指揮者だと言えると思います。ジンマンの「甘過ぎるマーラー」は、少なくともペシェクのマーラーより、遥かに面白いのです。ツボを心得ていると言うか、詩的なマーラー演奏だと言えるでしょう。ペシェクのマーラーは、散文的であまり面白くありません。散文的な演奏、これほど詰まらないものはありません。まあジンマンという人にも問題がないわけでは決してなく、例えばグレツキの「悲歌のシンフォニー」でアップショーが歌ったポーランド語が間違っていたこと、などが挙げられる訳ですが、そうであったとしても、「甘過ぎるマーラー」は、私にとっては「初めてのマーラー」なのでした。つまり、私にとっては、ジンマンこそが、マーラーの喜びをもたらしてくれた最初の指揮者なのです。